高卒就職 保護者ガイド 第10回/応募前職場見学で見るべきポイントは?求人票では分からない「職場」を確認しよう

応募前職場見学で見るべきポイントは?求人票では分からない「職場」を確認しよう

応募前職場見学では、企業から会社や仕事内容について説明を受け、実際に働く場所を見学します。

でも、いざ見学に行くと、

「会社の人が優しかった」
「建物がきれいだった」
「説明が分かりやすかった」

という感想だけで終わってしまう高校生も少なくありません。

もちろん、それらも大切な印象です。

ただ、応募前職場見学で本当に確認してほしいのは、

「自分がここで毎日働くとしたら、どうだろう?」

ということです。

見学するのは1〜2時間程度かもしれません。

でも、入社すれば、その職場で1日8時間ほど過ごすことになります。

今回は、高校生が応募前職場見学でぜひ確認してほしいポイントを、実際に高校の中で就職指導の先生として勤務する中で見てきた事例も交えながらご紹介します。


① 採用担当者だけではなく「実際に一緒に働く人」を見る

応募前職場見学では、採用担当者や人事担当者が案内してくださることが多いと思います。

説明が上手で、優しく接してくださる担当者も多く、

「すごくいい人だった!」

と好印象を持つ高校生もいます。

もちろん、採用担当者の対応も会社を見る一つの材料です。

ただし、ここで一つ考えてほしいことがあります。

入社後、毎日その採用担当者と一緒に働くとは限りません。

人事に配属されることは、ほとんどないので
むしろ実際に多くの時間を一緒に過ごすのは、配属先の上司や先輩、同僚です。

だからこそ、職場を案内してもらったら、説明してくれている人だけを見るのではなく、実際に現場で働いている人たちにこそ目を向けてみてください。


② どんな年齢・性別の人が働いている?

実際の職場に入ったら、

「自分と近い年齢の人はいるかな?」

と見てみましょう。

求人票に従業員数は書かれていても、実際の職場にどんな人がいるのかまでは分かりません。

例えば、

  • 10代・20代くらいの若手社員はいるか
  • 男性・女性の割合はどうか
  • 自分と同じ高校卒業後に入社した社員はいるか
  • 若手社員はどんな仕事をしているか

などです。

特に、入社後に自分と近い立場になる若手社員の様子はぜひ見てほしいところです。

可能であれば、

「高卒で入社された方はいらっしゃいますか?」

「入社1〜2年目の方はどんな仕事をされていますか?」

と質問してみてもよいでしょう。


③ 社員同士はどんな雰囲気?

職場見学では、社員同士のやり取りも見てみましょう。

例えば、

誰かが通ったときに挨拶をしているか。

社員同士でどんな話し方をしているか。

分からないことがあったとき、周りに聞きやすそうか。

上司と若手社員はどんな距離感で話しているか。

もちろん、1〜2時間の見学だけで職場の人間関係をすべて判断することはできません。

ただ、

「自分がこの中に入って働くとしたらどう感じるかな?」

という視点で見るだけでも、会社の見え方は変わってきます。


④ 「音・におい・暑さ・寒さ」は必ず体感してほしい

ここは、私が特に高校生に確認してほしいと思っているポイントです。

職場環境には、求人票や会社のホームページだけでは分からないものがあります。

例えば、

音、におい、暑さ、寒さ、明るさ。

工場であれば、機械の大きな音がすることがあります。

食品工場なら、食品特有のにおいがあります。

化粧品や薬品などを扱う職場にも、それぞれ独特のにおいがあります。

夏場に非常に暑くなる現場もあれば、食品関係などでは一年中低い温度に保たれている職場もあります。

こうした環境が、

「自分にとって毎日過ごせる環境なのか」

を確認してください。


「仕事内容は嫌じゃない。でも、においが無理だった」

私が学校で就職指導をしていたとき、化粧品関係の工場に就職した卒業生がいました。

半年ほど経ったころ、学校へ相談に来て、

「仕事は嫌じゃないんです。でも、においがどうしても無理なんです」

と話してくれました。

本人にとって、その職場特有のにおいの中で毎日働き続けることが大きな負担になり、最終的に退職することになりました。

仕事内容や給与、休日が自分に合っていても、職場の人に恵まれていても、

毎日過ごす「環境」が自分に合わないことがあります。

だからこそ、職場見学で感じた、

「ちょっと音が大きいな」
「このにおい、毎日だったらどうかな」
「思ったより暑いな」

という感覚を、

「こんなことで会社を選んじゃダメかな」

と無視しないでください。

それも立派な会社選びの判断材料です。


⑤ トイレ・更衣室・休憩室も見る

仕事内容とは直接関係がなさそうですが、可能であれば、

トイレ、更衣室、休憩室などの設備

も確認してみてください。

仕事を始めれば、毎日使う場所です。

例えば、

「休憩時間はどこで過ごすんだろう?」

ということも、実際に働くとなれば大切です。

会社によっては食堂があったり、休憩スペースが用意されていたりします。

高校生はつい仕事内容ばかりを見てしまいますが、

自分が朝出勤してから夕方まで、この会社でどう過ごすのか

という一日の生活をイメージしながら見てみるとよいでしょう。

「お手洗い大丈夫ですか?」と聞かれたときは、用を足したいわけではなくてもトイレを見に行くために「使わせていただいてもいいですか?」と答えてもいいかもしれません。


⑥ 職場が整理整頓されているか

工場や作業現場であれば、整理整頓の状態も見てみましょう。

道具や材料が決められた場所に置かれているか。

通路に物が置かれていないか。

清掃されているか。

こうした部分は、単に「きれいな会社かどうか」を見るためだけではありません。

特に製造現場などでは、整理整頓は安全に仕事をすることとも深く関係します。

職場見学だからと特別な場所だけを見るのではなく、普段社員が働いている場所をよく見てみましょう。


⑦ 求人票で読んだ「仕事内容」と実際の仕事を比べる

職場見学前に、もう一度求人票の仕事内容を読んでおくことをおすすめします。

そして実際の仕事を見ながら、

「求人票に書いてあった仕事って、これのことなんだ」

と確認してみてください。

文字だけではイメージできなかった仕事も、実際に見ると理解しやすくなります。

逆に、

「思っていた仕事と違った」

と感じることもあります。

それも職場見学の大切な成果です。

「イメージと違った=悪い会社」ではありません。

応募する前に違いに気付けたことに意味があります。


⑧ できれば「自分が実際に担当する仕事」を見せてもらう

企業には、さまざまな部署や仕事があります。

大きな工場を見学して、

「ものづくりってすごい!」

と思っても、入社後に自分が担当する仕事が、その日に見た仕事とは限りません。

可能であれば、

「高卒で入社した場合、最初はどの仕事を担当しますか?」

と聞いてみましょう。

そして、その仕事を実際に見せてもらえるのであれば、ぜひ見てください。

会社全体を見ることと、自分が入社後にする仕事を見ることは別です。

「この会社で働きたい」だけでなく、

「この仕事を自分が毎日できそうか」

まで考えることが大切です。


職場見学は「いいところ探し」だけをする場所ではありません

応募前職場見学というと、

「この会社のいいところを見つけよう」

と思って参加する高校生もいるかもしれません。

もちろん、会社の魅力を知ることは大切です。

でも、それだけではありません。

例えば、

「音が思ったより大きかった」
「夜勤が自分には難しそう」
「仕事内容が想像していたものと違った」
「若い人が思っていたより少なかった」

と感じることもあります。

それは決して悪いことではありません。

応募前職場見学は、

「この会社に入りたい」と確認する場であると同時に、「自分には合わないかもしれない」と気付くための場

でもあります。

入社してから初めて気付くより、応募する前に気付けた方がいい。

そのための職場見学です。


見学は1〜2時間。でも働くのは毎日約8時間

職場見学の時間は限られています。

企業の方も丁寧に迎えてくださり、説明をしてくださいます。

だからこそ、見学中は会社の良いところがたくさん見えると思います。

でも、一度想像してみてください。

朝、この会社に出勤する。
制服に着替える。
この人たちと仕事をする。
この音やにおいの中で過ごす。
休憩室で昼休みを過ごす。
午後からまた仕事をする。
そして夕方、家に帰る。

それを週5日、何年も続けていくかもしれません。

職場見学では、

「今日ここに来て楽しかったか」だけではなく、「ここで毎日働けそうか」

という視点をぜひ持ってください。

それだけで、求人票だけでは分からなかった会社の姿が見えてくると思います。


保護者の方へ|帰宅直後に「どうだった?」だけで終わらせないで

そして、職場見学から帰ってきたお子さんに、

保護者:「どうだった?」

と聞くと、

子:「よかった」

で会話が終わってしまうことがあります。

これは、もったいないです。

せっかく実際の職場を見てきたので、

「どんな人が働いてた?」
「若い人いた?」
「実際の仕事はどうだった?」
「音とかにおいはどうだった?」
「休憩するところは見た?」
「一番いいと思ったところは?」
「逆に、ちょっと気になったところは?」

など、具体的に聞いてみてください。

その会話の中から、本人自身も気付いていなかった「合う・合わない」が見えてくることがあります。

ただし、ここで、

「それならやめた方がいいんじゃない?」

とすぐに親が結論を出す必要はありません。

まずは本人がどう感じたのかを聞いて、一緒に整理してみてください。


まとめ|「働く自分」を想像しながら職場を見る

応募前職場見学で確認してほしいのは、会社の知名度や建物のきれいさだけではありません。

実際に一緒に働く人。
若手社員の様子。
職場の雰囲気。
音・におい・暑さ・寒さ。
トイレや休憩室などの設備。
整理整頓。
そして、実際に自分が担当する仕事。

こうしたものは、求人票を何度読んでも分からない情報です。

そして、

「自分がここで毎日働く姿を想像できるか」

という視点で見てみてください。

応募前職場見学は、企業に自分を見てもらうためだけの機会ではありません。

高校生自身が、自分に合う会社を見極めるための大切な機会でもあります。


次回予告

職場見学を終えて帰ってきたお子さんに、

「どうだった?」
「よかったよ」

だけで会話を終わらせていませんか?

次回は、応募前職場見学のあとに、保護者がどんな質問をすれば、お子さん自身の「合う・合わない」を整理できるのかを具体的にご紹介します。

「歓迎してもらったから、この会社にする」ではなく、仕事内容、職場環境、働く人、本人が感じた違和感まで振り返りながら、納得して応募先を決めるための親子の会話について解説します。