外国ルーツのある高校生から応募が来たら|採用担当者が知っておきたい在留資格の基本
高卒採用の応募が解禁されるこの時期、採用ご担当者さまから増えているご相談があります。
「外国にルーツがあると思われる高校生から応募書類が届いた。どう対応したらいいか分からない」
実際に、当社のサービスをご利用いただいている企業様からも、この夏こうしたご相談をいただきました。日本で生まれ育った、または幼少期から日本の学校に通ってきた「外国にルーツを持つ高校生」が、地元企業への就職を希望するケースは、今後さらに増えていくと考えられます。文部科学省の調査でも、日本語指導が必要な児童生徒の数は年々増加しており、直近の令和7年度調査では全国で過去最高の84,759人に達しています。高校段階でもこの傾向は同様です。
本記事では、出入国在留管理庁・厚生労働省が公表している事業主向けの公式情報をもとに、初めて外国にルーツのある高校生を採用する企業様が、選考から入社までの間に確認しておきたいポイントを整理しました。
※本記事は一般的な制度の概要をまとめたものであり、法律的な助言や個別ケースの判断を行うものではありません。実際の手続きや該当可否は生徒お一人おひとりの在留資格・在留状況によって異なります。個別の案件については、出入国在留管理庁、最寄りの労働局・ハローワーク、または行政書士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。
面接で聞いてはいけない質問は?
国籍や出身を前提とした、次のような質問は就職差別につながりかねないため避けてください。これは外国籍の生徒に限らず、すべての応募者に共通する採用選考の基本ルールでもあります。
- 国籍を尋ねる
- 「いつから日本に住んでいるの?」と尋ねる
- 「外国にルーツがあるのですか?」と尋ねる
- 日本語検定(日本語能力試験)の級を尋ねる
- 保護者やご家族の国籍・在留資格を尋ねる
- 「将来は母国に帰る予定ですか?」など帰属意識を確認する質問
- 「お箸は使えますか?」など生活習慣を確認する質問
基本的な考え方はシンプルです。
「外国にルーツのある生徒が来た」ではなく、「一人の高校生が来た」という姿勢で選考にあたることです。
お名前だけで外国籍かどうかを判断しないことにも注意してください。
帰化された方や特別永住者のように、就労に制限のない方も多くいらっしゃいます。
在留資格の確認(後述)は、特定の生徒を見分けるための面接での質問ではなく、内定後にすべての外国籍採用者に対して行う一般的な事務手続きです。面接の場で在留資格について尋ねる必要はありません。
語学力を確認したいときはどうする?
業務上、日本語でのコミュニケーション能力を確認したい場合は、「日本語検定は何級ですか」と直接尋ねるのではなく、次の方法で確認します。
- 履歴書の資格欄に日本語能力試験(JLPT)の結果が記載されていれば、それを参考にする
- 記載がなければ、面接での通常のやり取りや筆記試験の結果から、業務に必要な日本語力があるかを判断する
参考までに、JLPTのレベルと業務での目安は以下の通りです(JLPTは主に「読む」「聞く」力を測る試験であり、話す・書く力を直接証明するものではない点にご留意ください)。
| レベル | 業務での目安 |
|---|---|
| N1 | 接客・書類作成・専門的なやり取りを含む業務までほぼ支障なくこなせる水準 |
| N2 | 一般的な接客・事務・社内コミュニケーションに対応できる水準。在留資格変更でも一つの目安とされることが多い |
| N3 | 日常会話や簡単な業務連絡は可能。複雑な指示や書類のやり取りにはフォローが必要な場合がある |
| N4 | 簡単な日常会話はできる水準。業務上の細かい指示はやさしい日本語や図解の補足があると安心 |
| N5 | 挨拶や基本的なやり取りができる水準。単独での業務遂行は難しく、丁寧なサポート体制が望ましい |
出典:日本語能力試験JLPT「N1〜N5:認定の目安」をもとに作成
なお、
学校斡旋での応募であれば、学校側が「就労資格を得られないと見込まれる生徒」をあえて斡旋することは通常ないため、在留資格の面で過度に心配する必要は少ないとされています。
在留カードの確認は、いつ・どう行う?
在留カードの確認は、面接時ではなく、内定が決まった外国籍の生徒に対して行う一般的な事務手続きです。必ず在留カードの提示を求め、次の3点を確認してください。
- 就労制限の有無(在留カード表面):「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」は就労活動に制限がありません。それ以外の在留資格は、認められた活動の範囲内でのみ就労できます。
- 資格外活動許可欄(在留カード裏面):「家族滞在」や「留学」など本来は就労が認められていない在留資格でも、資格外活動許可があれば一定範囲内(原則週28時間以内)でアルバイト等が可能です。
- 在留期間(満了日):入社日以降も有効かどうかを確認します。満了が近い場合は更新手続きの見込みも確認しておくと安心です。
出入国在留管理庁は、ICチップの情報と券面表示を照合できる「在留カード等読取アプリケーション」を無料提供しています。偽造・変造カードの発見にも有効なため、活用が推奨されています。
在留カードを確認せず採用し、結果的に就労が認められない人を働かせてしまった場合、事業主側も処罰の対象になります(後述)。
「家族滞在」の生徒を正社員として採用したい場合は?
父母の来日に同伴して「家族滞在」の在留資格で入国し、そのまま日本の高校に通ってきた生徒は、高校生採用において特に注意が必要な代表的なケースです。
「家族滞在」のままでは就労が資格外活動許可の範囲(原則週28時間以内)に限られるため、フルタイムの正社員・契約社員として採用する場合は、「定住者」または「特定活動」への在留資格の変更が必要になります。これらの生徒は「技術・人文知識・国際業務」等、一般的な就労系在留資格が求める学歴要件(大学卒業等)を満たさないため、そちらへの変更はできません。
次の要件をすべて満たす場合、在留資格の変更が認められることがあります。
「定住者」への変更
- 日本の義務教育(小・中学校)を修了していること
- 日本の高校を卒業/卒業見込みであること
- 入国後、引き続き「家族滞在」で在留していること
- 入国時に18歳未満であること
- 就労先が決定していること(内定を含む)
- 住居地の届出等、公的義務を履行していること
「特定活動」への変更
- 日本の高校を卒業/卒業見込みであること(編入の場合は日本語能力試験N2程度も必要)
- 扶養者が身元保証人として在留していること
- 入国後、引き続き「家族滞在」で在留していること
- 入国時に18歳未満であること
- 就労先が決定していること(内定を含む)
- 住居地の届出等、公的義務を履行していること
採用担当者が実務で気をつけたいポイント
- 内定通知書には雇用期間・雇用形態・給与を明記してください。在留資格変更許可申請の添付書類として必要です(雇用契約書や労働条件通知書でも可)。出入国在留管理庁は内定通知書の参考様式を公開しています。
- 高校在学中に申請することも可能です。卒業証明書は在留資格変更許可時(在留カード受領時)にあとから提出すればよいとされています。
- 審査には一定期間がかかります。入社日に間に合うよう、内定を出すタイミングから逆算したスケジュールを組んでください。
- 学校側(進路指導の先生)も手続きに慣れていない場合があります。早めに本人・保護者・学校と情報共有しておくとスムーズです。
学校側から特に案内がない場合は、内定から入社までの間に「恐れ入りますが、外国籍の生徒さんではありませんか?その場合、在留資格の確認をさせていただけますか。必要な手続きがあれば当社としても対応いたします」と丁寧に声をかけるとよいでしょう。
ごくまれに在留資格の切替が難しいケース(17歳を超えてから来日し日本の高校に編入した方で、日本語能力試験N2相当に届いていない場合など)もあります。該当しそうな場合は、まず出入国在留管理庁または労働局にご相談ください。
確認を怠るとどうなる?
不法就労となるのは主に次の3つのケースです。
- 不法滞在者・退去強制が決まっている人が働くケース
- 就労が認められていない在留資格の人が、許可を受けずに働くケース
- 出入国在留管理庁が認めた範囲を超えて働くケース(週28時間超の労働など)
不法就労と知りながら、または在留カードを確認していないなどの過失により雇用してしまった事業主は、「不法就労助長罪」に問われます。現行では3年以下の懲役(拘禁刑)もしくは300万円以下の罰金、またはその両方。令和9年4月1日以降は5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金に引き上げ予定です。
「知らなかった」では済まされません。採用前の在留カード確認を必ず徹底してください。
ハローワークへの届出は必要?
労働施策総合推進法にもとづき、外国人労働者(特別永住者、在留資格「外交」「公用」の方を除く)を雇い入れたとき・離職したときは、すべての事業主にハローワークへの届出が義務付けられています。
- 雇用保険の被保険者になる場合:「雇用保険被保険者資格取得届」の提出をもって届出を兼ねます。雇い入れた日の属する月の翌月10日までに提出。
- 雇用保険の被保険者にならない場合:「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」を、雇入れ・離職した日の属する月の翌月末日までに提出。
- 2020年3月以降の雇入れ・離職については、在留カード番号の記載も必要です。
届出を怠ると、30万円以下の罰金の対象となります。
採用後、雇用管理で配慮したいことは?
厚生労働省の指針では、事業主が講ずべき措置が定められています。高校生採用に特に関わる点は以下の通りです。
- 均等待遇:国籍を理由に賃金・労働時間等で差別的な取扱いをしない
- 労働条件の明示:母国語やわかりやすい日本語を用いるなど、本人が理解できる方法で説明する
- 安全衛生教育:機械・原材料の危険性等を、本人が理解できる方法(母国語、視聴覚教材など)で確実に伝える
- 社会保険の適用:多言語対応の広報資料等を活用しながら周知に努める
- 適切な人事管理・生活支援:評価・賃金決定等の運用を明確にし、苦情・相談窓口を整備する
- 帰国・在留資格の変更等への配慮:手続きに必要な休暇取得や勤務時間の配慮を行う
採用前〜入社時のチェックリスト
- 面接では、国籍やルーツを前提とした質問をしていない(在留資格の確認は内定後に行う)
- 在留カードの提示を求め、「就労制限の有無」「資格外活動許可欄」「在留期間」を確認した
- 本人が「家族滞在」の在留資格の場合、在留資格の変更が必要かどうかを確認した
- 在留資格の変更が必要な場合、審査期間を見込んだ採用・入社スケジュールを組んだ
- 内定通知書に、雇用期間・雇用形態・給与を明記した
- 雇入れ後、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を期限内に行う予定を立てた
- 労働条件通知書や社内ルールを、本人が理解できる方法で説明する準備をした
困ったときの相談窓口
初めて外国人材を採用する場合は、ハローワーク等の専門機関に相談するのがおすすめです。
専門アドバイザーによる個別相談(無料・要予約)やオンラインセミナー等も実施されています。
- 出入国在留管理庁「不法就労防止にご協力ください」
- 出入国在留管理庁「『家族滞在』の在留資格をもって在留し、高等学校卒業後に日本での就労を希望する方へ」
- 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」
- 外国人在留支援センター(FRESC)
在留資格や個別の手続きについて迷う場合は、最寄りの地方出入国在留管理官署、または外国人在留総合インフォメーションセンター(0570-013904)へ。労務管理や届出については、事業所を管轄する労働局・ハローワークにご相談いただけます。
まとめ
外国にルーツのある高校生の応募は、今後さらに増えていくと考えられます。大切なのは、身構えることではなく、「一人の高校生」として選考にあたる姿勢と、内定後に必要な事務手続きを一つひとつ確認していくことです。
より詳しいチェックリスト付きの完全版資料は、下記よりダウンロードいただけます。
【ダウンロード】外国ルーツの高校生を採用する際に気をつけること(採用担当者向け実務マニュアルPDF)
外国ルーツの高校生の採用に関するご相談は、株式会社アッテミーまでお気軽にお問い合わせください。